世代を繋ぎ、絆を深める ~五個荘木流町「木流サマーフェスティバル」&「木流町民運動会」

五個荘木流町は、79世帯220人の人口の自治会である。

町にある苗村神社は、4月の建部祭りの宵宮では、各町の大太鼓や五個荘奥町の「大提灯」の御渡が行われる神社である。

五個荘木流町会議所の隣には建部城を築き、青蓮院尊鎮法親王に書を学んで伝内流(建部流)を興し、六角義賢から「賢」の一字を与えられた「建部伝内」の屋敷跡がある。

そして向いにあるのは法蓮寺。

法蓮寺は、鎌倉時代に創建され、延徳元年(1489年)に改めて真盛上人を開基とし箕作山中に建立された寺院である。

法蓮寺(1589年再興)

永禄八年(1565年)に観音寺城主の佐々木義賢は、本城を息子の義治に譲り、自らは承禎と号して箕作山法蓮寺に入寺した。しかし、永禄十一年(1586年)に織田信長の観音寺城攻めの際に秀吉軍先鋒隊の兵火により、箕作城と共に焼失した。

その3年後の慶長三年(1589年)に西方和尚によって木流の雲光寺廃寺跡に再興され、以降、430年以上この地で人々を加護し、歴史を伝え続ける寺院である。

法蓮寺を会場に、毎年7月の第3土曜日に開催されるのか「木流サマーフェスタ」(以下、フェスタ)である。

フェスタは、その年の副自治会長を委員長として約40名の個人参加で構成する実行委員会方式で開催される。

フェスタでは、焼きそば、焼き鳥、フランクフルト、フライドポテト、かき氷、ゆで玉子といった模擬店が出店される。

サマーフェスタの様子

そしてステージではイベントが催され、子どもたちは寺院周辺で「宝探し」をしたり、ヨーヨー釣りをしたり、当て物をしたりして夏の夜のひと時を楽しむ。

サマーフェスタの様子

最後は「抽選会」。何が当たるか?誰が当たるか?毎年フェスタの締めとして盛り上がる。

以前は青年会が主催していたがフェスタ。しかし、青年会はなくなり、実行委員会方式に。

町内の組単位でステージ発表や出し物をしていたが、それもなくなった。

しかし、時代の流れとともに形や内容を変えながら40年以上にわたって開き続けている。

今年はコロナ禍で中止となったが、毎年100人以上が集う木流町の一大イベントである。

そして虫送り。

毎年土用三郎(夏の土用入りから3日目)に近い7月の日曜日の18時に農家の方々が法蓮寺前に集合。

お神酒をいただき、白山神社の元火で松明に火をつけ隊列を組んで出発。

「イモチドンドンオッカエレ オッカエレ」と唱えながら田んぼ道を通って、五個荘三俣町まで虫を送る。

最近では子ども会の子どもたちも一緒に虫を送り、豊作を祈る。

虫を送って「実り」の秋を迎える。そして「スポーツ」の秋も迎える。

毎年10月の第2日曜日には木流町民運動会が開催される。

「びわこ国体」(第36回国民体育大会、昭和56年(1981年)開催)に2年先立つ昭和54年(1979年)に始まり、以降、40年以上開催されつづけている。

自治会長の竹中徳司さんは、「選挙の投票日でも運動会をやります」と話す。

運動会を企画運営するのは、木流町のスポーツ推進員2名と各組(全7組)の体育協力員7名の合計9名。

日程は木流町の規約で決まっている。

「ワンズ」と呼ばれる中学生たちによるラジオ体操から始まり、子ども会が障害物競争、老人会がゲートボールと住民が参加しやすいプログラムが準備されている。

以前は「組対抗」としていたが、組の軒数や年齢層にばらつきもあるために、各組でチームをつくって競う「チーム対抗」に変更。

1チームの組もあれば、2チーム出す組も。

ただ一つ難点が。

それは、同じ組のチーム同士で競うことになることだ。優勝チームには賞品が贈られる。

運動会の様子

運動会で最も盛り上がるのは「仲良しよーいドン」というプログラムである。

このプログラムは、いわば孫紹介。

就職や結婚で木流町を出た人たちが運動会に合わせて帰省する。

子どもが孫を連れて帰ってくる。しかし、誰の孫かはわからない。

そこで、運動会で紹介しようと始めたのがこのプログラムである。

「〇〇の子どもの〇〇が孫の〇〇を連れて帰ってきくれました。」と紹介をして「よーいドン」。

途中で「孫」が賞品のお菓子をとってゴール。

参加する孫は歩けるようになってから。つまり「よーいドン」できるようになってから小学校に入るまで。町外の孫は参加費500円を渡して出場する。

「仲良しよーいドン」

そしてお昼ご飯。

組ごとに建てたテントで組ごとにお昼ご飯を食べる。これがメインである。

「以前は、運動会が始まるや否や呑んでいた。」

この取材に参加した五個荘地区住民福祉会議委員で地元が木流町の大橋保治さんは話す。

運動会の様子

普段、組で寄ってご飯を食べることも少ない。組の結束を固くするのがお昼ごはんである。

夏のフェスタで木流町の住民同士が交流し、秋の運動会で組の結束を固くする。

フェスタと運動会は、木流町の住民の絆を深める2大イベントである。

現在、木流町の高齢化率は今年6月1日時点で39.5%。約4割。

脈々と受け継がれてきた神事の維持・継続には次の世代の担い手が必要だ。

自治会評議員会でも「どうしたら若者にUターンしてもらえるか」という議論がされているという。

「続けるのは大変です。しかし、サマーフェスタや運動会で楽しい取り組みを続け、木流町を離れた人に戻ってきてほしい、若者たちに木流町にきてほしい」と自治会長の竹中さんは話す。

今年はコロナ禍でいずれも中止に。

しかし、フェスタと運動会は40年以上にわたり形を変えながらも連綿と受け継がれてきた営みである。

これからも、そして形が変わったとしても、五個荘木流町の世代を繋ぎ、絆を深め続けるだろう。

(聞き手:大橋 保治・川嶋 重剛・奥村 昭)

(報告:社会福祉法人六心会 地域支援担当 地域支え合い推進員 奥村 昭)