見守り続けるチカラ、綴り続けるチカラ~五個荘山本町

五個荘山本町は人口約630人、約200世帯で高齢化率28%の自治会である。

かつては、旧旭村役場や山本尋常高等小学校があり、旧村で中心的な役割を果たしていた地域である。

五個荘山本町の福祉委員会では、偶数月の第2火曜日の19時30分から自治会館で「見守り会議」を開催している。

福祉委員会が設立されたのは、平成30年4月。「見守り会議」は五個荘川並町と同じく、平成29年12月29日に東近江市社協(市社協)主催、五個荘地区社会福祉協議会(地区社協)共催の「つながりづくり講演会」がきっかけとなって開始された。

その方法は「山本町流」である。

山本町の独居高齢者などの「気になる人」を、11名の福祉委員が担当して日々の見守り活動を行っている。担当の民生委員・児童委員は福祉委員も兼ねている。

日常的な見守りに合わせ、五個荘地区社会福祉協議会が実施する「独居高齢者見守り訪問活動」で季節に応じた品を月1回届け、お変わりがないかどうかも確認する。

そして自治会長と福祉委員、市社協の五個荘地区担当、社会福祉法人六心会の地域支援担当(地域支え合い推進員)が参加する「見守り会議」において、福祉委員が担当している方々の様子や気になる点を口頭で報告し合うのである。

例えば、「Aさんはデイサービスを利用しはじめた」とか、「Bさんは最近、険しい表情のことが多く気になる」とか、「Cさんと話しをしていると、見えないものが見えたり、行ってもいないところに『行った』と言ったりするので認知症が進行しているのではないかと気がかかり」といった内容である。

報告を聞いた他の福祉委員からは、報告のあった人に関して別の視点からの様子が報告されたり、遠方に暮らすご家族の情報などが伝えられたりして、情報の共有とともに、担当する方の情報量を増やす。

また、見守りの際の「困りごと」や「対応に迷うもの」についても報告され、他の福祉委員から、経験談が語られたり、助言があったり、連絡すべき専門機関について情報提供がされたりする。

こうして福祉委員全員が報告をし、情報の共有と更新を行う。

山本町ではいわゆる「見守りマップ」は使わない。記録シートのような情報共有用紙も使わない。すべては、それぞれの福祉委員の記憶と記録に任されている。

その理由は、個人情報とプライバシー情報を取り扱うためだ。

盗難にあったり紛失したりした場合、見守っている人たちやご家族など関係者の権利利益が損なわれるからだ。

この方法で見守り続けるためにも、一人の福祉委員が多くの人を担当しないよう、10人を超える福祉委員が担当制で活動しているのである。山本町は20組あるので、平均すると1人の福祉委員が2組分を担当することになる。

ただ、自治会に入っていない人もいる。だからといって見守りの対象から外すことはしない。「組」で考えるのではなく自治会「直轄」として見守りが必要な方に対しては見守り活動を実施する。

ある福祉委員は「福祉委員の役割は『気づき』『受け止め』『つなぐ』と教わったが、人によって『気づき』の度合いも異なるし、『受け止め』方にも温度差がある。『つなぐ』ためにはどこにどのようにしてつなぐのかを知ることが大切。私たち福祉委員のレベルアップ、スキルアップが必要」と話す。

見守り会議はコロナ禍でも中止せず、開始されて3年が経過した。

日々見守っている方々の心身の健康状態の変化や、人との関わり方の変化に気を配りながら、見守り続けている。

 

見守り活動を含め、山本町内の出来事や行事などを伝え続けているのが「広報やまもと」である。

「広報やまもと」の前身となる「山本区会報 やまもと」は昭和63年5月1日に創刊された。その時の発行責任者には「神崎郡五個荘町大字山本 区長 森 久雄」と記載がある。

「やまもと山本区会報 やまもと」(広報「やまもと」創刊号)(昭和63年5月1日発行)

 

そして、当時の編集責任者であった小泉茂さんは「発刊にあたって」の記事で、「山本区、区民の声として、区の会報を発行したらどうか、その事が、明るい山本の町づくりになり、当山本区の活性化になるのではないか(中略)ここに山本区の会報として『やまもと』を発行することになりました」とその経過と願いが記されている。

なお、創刊号の目次は次のとおりである。

(1)新区長の挨拶

(2)山本区会報『やまもと』の発刊にあたって

(3)4月5日開催、第1回隣組長会

(4)4月4日開催、第1回評議員会

(5)転入・異動(組替え)の、お知らせ

(5)では、新しく山本に転入された方の名前と組の紹介と、区内で他の組に異動された方の名前と移動先の組が紹介されている。

第3号から山本区広報となり「広報 やまもと」に名称を変え、現在まで毎月欠かさず発行されてきた。

その号数は今年の10月1日発行の「広報 やまもと」で390号を数える。

片山卓自治会長の「これから冬に向かいインフルエンザの流行も気になるところです。自治会員の皆様におかれましては、健康に十分注意してお過ごしください」という言葉で締めくくられた「ご挨拶」から始まる紙面は次の内容となっている。

「広報 やまもと」(第390号)(令和2年10月1日発行)

 

・ごあいさつ(自治会長・片山 卓)

・第6回評議員会

・第2回山本自主防災会

・第3回自治会費検討委員会

・箕作会だより

・10月ふれあいサロンお知らせ

・文芸サロン(俳句)

・令和2年10月自治会の行事&我が家の行事予定

昭和、平成、令和へ元号が変わり、神崎郡五個荘町大字山本から東近江市五個荘山本町へ住所表記が変わっても毎月欠かさず発行される「広報 やまもと」。

五個荘山本町の人と暮らしを綴り続けている「財(たから)」である。

 

(聞き手:川嶋 重剛・成田 美樹・辻 薫・奥村 昭)

(報告:社会福祉法人六心会 地域支援担当 地域支え合い推進員 奥村 昭)