五個荘中町は、146世帯、人口481人で高齢化率が25.2%の自治会である。中町の地名の由来は、小幡郷の鎮守であった小幡神社の所在する村であり、小幡郷の中心であったことから“中村”と称されていた。中町では、公会堂でふれあいサロンや敬老会、「中町フェスティバル」が開催され、住民のつどいの場の拠点となっている。
ふれあいサロンと敬老会
小幡神社の斜め向かいに建つのが五個荘中町公会堂である。
その公会堂で、五個荘中町(以下、中町)では、年2回のふれあいサロンと敬老会が開催されている。
ふれあいサロンは75歳以上の高齢者を対象に、6月と12月に公会堂で開催される。
ふれあいサロンを企画運営をするのは、中町の10名の評議員の方々である。評議員は町内を10ブロックの選挙区に分けて10名が選挙で選ばれる。
任期は2年で5名ずつ改選される。評議員の活動の継続性が担保できるよう、選任方法が工夫されている。
その評議員の方々が、東近江市の「ちょっときてえな講座」を活用して、講師リストから講師とプログラムを選定する。
当日は、歩いて参加できない方のために送迎も準備し、民生委員・児童委員、福祉委員も加わり、関係者全員で運営する。
ふれあいサロンの開催は、回覧板でお知らせをして出席をとる。毎回、約20名の参加があり、プログラムを楽しんだ後、参加者全員で食事をし、歓談して終わる。
このうち、12月のふれあいサロンでは、毎年子ども会による高齢者と子ども達の交流プログラムが実施されている。
9月には、敬老会が開催される。敬老会は75歳以上の方々が参加対象である。ふれあいサロンと同様に、講師を呼んだプログラムを企画する。
残念ながら欠席された方には、長寿のお祝いの気持ちを込めて、自治会で「紅白まんじゅう」を届けている。この時に欠席された方の様子を窺う機会となっている。
なお、12月には、自治会長と評議員、民生委員・児童委員が、五個荘地区社会福祉協議会が用意した品物を添えて、約30名の80歳以上の高齢者の方々の歳末訪問を行う。
中町フェスティバル
そして、中町の全住民を対象にして開催されるのが、「中町フェスティバル」(以下、フェスティバル)である。
中町では以前は北公園で運動会を開催していたが、高齢化が進む中、走ったり、体を動かしたりする「運動会」はなかなかしんどくなってきた。若年層の中高生も学校の部活動でなかなか参加できない。
そこで運動会の代わりに、全住民のつどいの場としてのフェスティバルを開催するようになったのである。
フェスティバルは、10月の第3日曜日を中心に開催される。主催するのは自治会長である。そこに、自治会のスポーツ担当の方2名が加わり、3人で企画する。当日の運営には、評議員や中町に13組ある組長が参加する。
フェスティバルの会場は、公会堂と公会堂を囲む美しい芝生の敷地。公会堂の敷地内で模擬店を開催し、参加者全員がビンゴゲームを楽しむ。
中町オリジナルの脳トレ「アハ体験」が人気だ。「アハ体験」(Aha-Erlebnis)は、1907年にドイツの心理学者カール・ビューラーによって提唱された心理学の理論で、ニュートンが木からリンゴを落ちるのを見て万有引力の法則を閃いたという逸話が典型例だそうだ。
日本ではバラエティ番組が、徐々に変化する画像や映像などの変化に気づく体験として広まり、有名になった言葉である。
さて、中町のフェスティバルでのアハ体験は、中町の風景写真が徐々に変わっていき、何が変わったのかを当てる。変わったところが分かると「ああそこか!」と大変盛り上がる。
ファスティバルはおおよそ100名の住民が参加するという。孫も連れてやってくる方もいて、この日は公会堂が住民の集いの場として賑わう。
欅の若木ととともに
中町の1組から6組までは従来からの在所である。7組からは新たに開発された住宅地であるが、一番古い住宅地では開発されて30年位経過しており、高齢化も進んでいる。評議員の選任や、外国籍住民の方々とのゴミ出しなどの暮らしのルールの共有化も課題となっている。
公会堂から国道に向かってしばらく歩くと、山王神社がある。小幡神社の小宮で「へそ宮さん」と呼ばれている。
へそ宮さんには、五個荘地区まちづくり協議会の「わがまち一番」でも紹介された、樹高28m、幹回5.9m、樹齢は推定800年といわれていた大欅があった。
しかし、老木のため落枝も多くなり、「中村講」の決定により平成24年(2012)12月3日に伐採された。
そして、社、鳥居が新調され、大欅の跡に欅の若木が植えられた。
欅の若木の根本に建立された石碑に、次の言葉が刻まれている。
へそ宮さんの大欅跡
この地に、樹齢八百年、樹高二十八米、幹回り五・五七米の
大欅あり。近江名木誌に記された巨木なり。
地上五米に大きな瘤あり。へそ宮さんという。
春には、新緑が芽吹き、境内を覆う。
夏には、緑陰に子どもが遊び、梟の棲み処となり、
秋には、落葉多く、芋を焼き食す。
近年、樹勢衰へ落枝多し。
講中議により、平成二十四年十二月三日にこれを伐採す。
跡に、若木を植え、社・鳥居を新調し、境内を整備する。
平成二十五年五月吉日 中村講
若木は天にむかってぐんぐん伸びている。
中町は、この若木の成長とともに、町づくりの課題に丁寧に向き合いながら、発展を続ける。
(聞き手:小杉勇・川嶋重剛・奥村 昭)
(報告:社会福祉法人六心会 地域支援担当 地域支え合い推進員 奥村 昭)
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