三俣町の絆をつなげる~五個荘三俣町「区民大運動会」

五個荘三俣町(以下、三俣町)は、人口約150人・51世帯、高齢化率は約21%で、比較的高齢化率が低い町である。

『五個荘町史』によると「三俣」の地名は「河川・水路が三俣に分岐することに因むもの」とみられ「位置的に見て大同川の分岐点であった可能性が高い」とされている。

この大同川を境に東側のカミと中山道に接する西側のシモに二分されていて、カミには三俣神社が、シモには若宮神社が鎮座する。町は条里型地割(土地の区画を規則的に編成し、1町(約109m)方格の坪を座標表示するもの)で整然とした区画が多いとされる。

三俣神社

若宮神社

江戸時代には「三俣鋳物師」として活躍する職人集団があった。五個荘地区まちづくり協議会・中山道五個荘にぎわい事業委員会が作成した看板には、「寛永18年(1641)から宝暦7年(1757)までの100年あまり大型の釣鐘(洪鐘)を造る技術をもった鋳物師として活躍」し「その後、弘化3年(1846)に再び三俣鋳物師として近年にいたるまで続いていた」と紹介されている。

三俣鋳物師を紹介する看板

平成22年に閉じられた西澤梵鐘鋳造所は、江戸時代から300年以上にわたり伝統的な梵鐘製造技術を受け継いでいた。九代目当主の故・西澤吉太郎氏の技術は、平成7年(1995)に「梵鐘づくり―滋賀県・五個荘町―」と名付けられた国立民族学博物館の72分の記録映画にもなった。

西澤梵鐘鋳造所で製造された梵鐘

三俣町でも近年では宅地開発が進み、平成28年に造成された23戸すべてが分譲された。

9世帯単位で全6組あり、1~3組は従来からの世帯で、4組は新旧混在、5~6組は新興住宅の若い世帯である。ちなみに一番新しい世帯は約3年前に入ってきた世帯の方である。

新旧住民がほぼ半数ずつとなった。

三俣町では民生委員・児童委員と福祉委員が、毎月1回自治会館で「なごみ会」を催している。なごみ会は町内のどなたでも参加できることから、高齢者等が年に5~6回集うおしゃべり会で、10名くらいの方が参加する「集いの場」である。

五個荘三俣町自治会館

コロナ禍で中止していたが、感染予防対策を行いながら9月から再開した。

また、地蔵講は毎月23日にご高齢の女性たちが催し、これも「集いの場」となっている。

ちなみに、このお地蔵様は『五個荘昔ばなし』(昭和55年2月1日発行)の「民話」に登場する「まいらぬ地蔵尊」のお地蔵様である。

「まいらぬ地蔵」のお地蔵様(写真:「GO!まち協 わがまち紹介」)

そして、三俣町の住民が、組単位で住民同士が交流を深める機会が「三俣区民大運動会」(以下、運動会)である。

以前、三俣町の運動会は神社で行っていた。しかし、自治会員から田んぼの寄付を受け、自治会で公園を造ることにした。

そして、平成12年頃からはこの公園で運動会を開催することになったのである。

美しく整備された公園

開催するのは、稲刈りが終わる10月中頃。三俣町の住民が全員参加する運動会である。種目は、全員参加のラジオ体操とビンゴを除くと15種目ある。

全員でラジオ体操

①アンブレラキャッチ(組対応)、②サイコロリレー(組対抗)、③パンでバーン(組対応)、④輪投げ(三福会・子供会)、⑤ロープを使って(組対抗)、⑥綱引き(予選・決勝)(組対抗)、⑦灯台下暗し(組対抗)、⑧バケツでポン(三福会・子供会)、⑨玉入れ(組対抗)、⑩運べピンポン(組対抗)、⑪満水リレー(組対抗)、⑫走ってワクワク(小学生未満)、⑬借り物競争(婦人会・子供会)、⑭ホールインワンを狙え(三福会)、⑮ストラックアウト

※「三福会」は老人クラブ

輪投げの様子

組対抗の種目が9種目である。組対抗で各組が一致団結する。

三俣町の運動会は、ユニークな種目名が並ぶ。例えば「アンブレラキャッチ」というプログラムは、ビニール傘を逆さにして、投げられたボールをキャッチする。キャッチしたボールの数で競うものである。

以前は競技性のあるプログラムであったが、今は交流の機会としてレクレーション的な要素が大きいプログラムとなっている。

ビンゴゲームは人気がある。運動会の日にこのプログラムを狙って参加する人もいるという。

綱引きはハードである。組対抗戦は盛り上がるが身体が疲れる。ただ、この疲れはなぜか心地よい疲れである。

綱引きの様子

自由に参加できる運動会。

残念ながら昨年は台風で、今年はコロナ禍で中止となった。

高齢化が進む一方、新興住宅も多いので、これから小学生の数も増えていく。

住民には交替勤務で、日曜日に休みでない方ももちろんいる。

だからこそ、全世代・全世帯を対象に町民全体がゆるくつながる、そんな場がより大切になってくるのである。

三俣町の運動会は、自治会の”絆”をつなげる場でありその一つの方法である。

自治会長さんは運動会だけでなく、スポーツや福祉活動等の多様な価値観について、いつごろ、どのように、どんなことをしたいのか自治会員の要望や意見をアンケートして検討してはどうかと考えているという。

少しずつでもつながっていく、つながりをつくる。

そんな”財”(たから)を育む取り組みを、三俣町はこれからも続けていく。

(聞き手:小杉 勇・河村 栄一・北川 友一・奥村 昭)

(報告:社会福祉法人六心会 地域支援担当 地域支え合い推進員 奥村 昭)