子どもの通学の安全を守る~五個荘日吉町「見守り隊」

平成24年(2012年)7月20日(金)は、五個荘小学校のスクールバスの運行の最後の日であった。

五個荘東小学校、五個荘南小学校、五個荘北小学校が昭和42年(1967年)4月に「五個荘小学校」となり、遠方から通う子どもたちのためにスクールバスが運行されていた。

しかし、合併して東近江市となって新しい通園、通学方法の統一基準がつくられ、五個荘小学校のスクールバスは約44年の歴史に幕を閉じた。

五個荘小学校

五個荘地区にスクールバスが走らなくなって8年が経つ。

五個荘日吉町(以下、日吉町)の小学生は、1~2年生は公共交通機関のバスで、3年生以上は約3.5キロの道のりを、毎日歩いて通学する。

通学時の子どもたちの安全を守るために活動しているのが、スクールガードだ。

東近江市教育委員会の「東近江市スクールガード活動の手引き」によると、スクールガード活動とは、「各小学校の通学路や学校敷地内において、不審者から子どもたちを守るために、『学校安全ボランティア』として巡回や子どもの見守り活動を行うもの」と説明されている。

日吉町では、自治会のスクールガードボランティアとPTAの「見守り隊」の方々が当番で活動を行っている。

1週間のうち、自治会のボランティアは火・水・木曜日の3日、PTAの方々は月・水・金曜日の3日を担当する。

自治会のスクールガードボランティアは、3月上旬に回覧板でボランティアを募集する。

応募してくださる方には、「登校」の時間帯と「下校」の時間帯、時間帯「不問」で活動できる時間帯を回答してもらうようにしている。

また、すでに活動して下さっている方々には、翌年も活動を継続してくださるようお願いをする。

そして3月下旬に「スクールガード会議」を開催して、次年度の活動の計画をたて、当番の調整を行い、新しい「スクールガードカレンダー」をつくる。

カレンダーは、5月はじまりで4月終わりである。その理由は、4月の新学期から開始するには前の年に4月分までカレンダーをつくっておく必要があるためである。

今年は15名のボランティアの方々が活動している。その半分くらいは、小学生の子どもが家にいない方であるが、日吉町の小学生の通学の安全を守るために活動をしているので ある。

このうち2人のボランティアは登校時に子どもたちと一緒に学校まで付き添う。往復で約7キロである。

横断歩道を渡る子どもたちの安全を確認する。

日吉町で小学校1~2年生は4人、3年生以上は10人である。2年生までは公共交通機関のバスを使い、3年生以上は徒歩で通学する。

西光寺に集合して朝7時15分に出発し、学校に向かう。何しろ3.5kmの通学距離である。集合時間も早い。

「距離が長いと何があるか分かりません」と自治会長の石田光明さんは話す。

スクールガードは登下校の見守りだけではなく、子どもたちのハプニングやアクシデントにも対応する。

たとえば忘れ物をした子どもがいた場合、保護者に電話をして、もってきてもらうように手配する。トイレに行きたくなった子どもには、近所の家にお願いをしてトイレを貸してもらう。

近年は、夏は朝でもとても暑い。そして、子どもたちが背負っているランリュックも結構重い。

登校途中に熱中症になって倒れた子どもがいた。このときは、救急車を呼んで幸いにも事なきを得たという。

「最近は不審者情報も多いので注意をしています」と石田さんは話す。

何年か前には、登校時間帯に子どもたちの近くで不審者が出没したことがあったし、夕方の時間帯にも不審者が出没している。

東近江市のホームページを見ると、令和2年11月27日時点の「不審者・変質者出没情報」によると、今年4月から11月27日までに21件の不審者・変質者出没情報が発信され、このうち五個荘地区でも3件発生している。

こうしたなか、五個荘小学校のPTAとスクールガードでは、ライングループをつくっていて、不審者・変質者情報はもとより、緊急情報などがあれば、即座に共有し、やりとりできる態勢を作っているのだ。

雨の日のスクールガードボランティアの活動の様子。

子どもたちの安全・安心を守るスクールガードボランティアの方々。

しかし、中には、なかなか挨拶が出来ない子どももいるという。

「知らん人には近づくなという教育のためでしょうか」と長年活動を続ける大橋一清さ んは話す。大橋さんは前民生委員・児童委員で、現副自治会長である。

大橋さんは子どもたちに近づき、しっかりと顔を見て「おはよう」と言い続けた。すると、子どもも「おはよう」といってくれるようになったという。

嬉しい出来事があった。

それは、卒業した子どもたちが寄せ書きをした色紙を贈ってくれたことである。

卒業生が先導して、日吉町の小学生全員のスクールガードボランティアの方々への感謝のメッセージが記されていたという。

そして、中学生になるとよく挨拶してくれるという。

小学校のときに、毎日のように顔を合わせていたからであろうか。また、成長したからであろうか。中学生になると逆に挨拶をしてくれるという。

 

そんな大切な役割を担っているスクールガードボランティアも、高齢化がすすむ。80歳になったから活動をやめるという方もいる。

日吉町は105世帯で約320人、高齢化率約35.6%の自治会である。新たな宅地造成は行われていない。

スクールガードボランティアの新規メンバーが、なかなか増えない現状がある。

「元気な人はできるだけ一緒に子どもたちと歩いてほしい」と大橋さんは話す。

子どもたちの通学を見守る。

働き方や暮らし方、家庭の姿が変わるなか、地域でのヨコの繋がりの形も変わっていくし、変わらざるを得ない。

しかし、日吉町の子どもを大切に想う気持ちは変わらない。

子どもたちが、スクールガードボランティアに見守られ通学した経験は、信頼できる地域の大人との出会いの経験でもある。

子どもたちは、日吉町のスクールガードボランティアの「大人の背中」を見て育つ。

そして、「地域の子どもは地域で守る」という日吉町のDNAが継承されていくのである。

 

(聞き手:川嶋 重剛・小杉 勇・西村 貞之・奥村 昭)

(報告:社会福祉法人六心会 地域支援担当 地域支え合い推進員 奥村 昭)