おにぎり結んで縁を結ぶ~ランコントル(rencontre)の町・五個荘清水鼻町

五個荘清水鼻町(以下、清水鼻町)は、中山道に面した箕作山ときぬがさ山の剣先に位置する交通の要所であった。

「清水鼻の名水」は、「醒井の水」「十王村の水」と並んで湖東三名水で、古くから中山道を旅する人たちの喉を潤してきた。

清水が湧き出る2つの山の剣先=鼻であることから、清水鼻という地名になったという。

「近江ノ國 清水鼻の名水 旧中山道」と刻まれた石碑

清水鼻の名水

清水鼻の名水の建屋

清水鼻町は、40 世帯で人口153人の町である。町内で4つの組をつくっていて、旧村地域で2組(3~4組)・20世帯、約25年前に造成された新興住宅地で2組(1~2組)・20世帯という、ちょうど、新旧世帯が半数ずつの町である。

五個荘町では、昭和42年(1967年)から平成3年(1991年)まで「五個荘町民体育祭」が開催されていた。

そのあとは「てんびんピック」として、5月に繖公園を中心会場に、ふれあいウォーク(現在の「てんびんの里ふれあいウォーク」の前身)やスポーツ少年団大縄跳びなどのスポーツイベントを行うようになった。(このイベントは平成4年~5年の2年間続いている。)

運動会は、各区(自治会)で開催されるようになり、清水鼻町では毎年10月10日のスポーツの日の直近の日曜日に、「健康スポーツ大会」として開催するようになった。

競技性よりも、玉入れやボール運びレース、綱引き、大縄跳び、パン食い競争、ペタンクなどのレクリエーション的な要素を中心とした内容としている。

最後はビンゴゲームで締めくくる。ちなみにビンゴゲームは100人以上が参加し、全員に「何か」が当たるという。

健康スポーツ大会を支えるのが、清水鼻女性会のメンバーである。

清水鼻女性会は、以前は「らんこんとる清水鼻」と称していた。

女性会の前身の名称は「婦人会」であることが多いが、五個荘町では婦人会から「らんこんとる五個荘」となった。

「らんこんとる」はフランス語の「rencontre」のこと。出会いや巡り会いを意味する言葉だ。

五個荘町内の各自治会も「らんこんとる」を冠した名称としていた。清水鼻町の場合は、「らんこんとる清水鼻」である。

五個荘町の合併により「東近江市女性会」となったため「らんこんとる清水鼻」も「清水鼻女性会」に名称変更した。

健康スポーツ大会では、女性会のメンバーが中心となって参加者の昼食をつくる。

昼食メニューは、かやく御飯のおにぎりに豚汁と決まっている。気さくに誰もが個々の弁当作りを心配なくみんなが同じものをホウバリ心置きなく参加できるゆえんである。

大会前日から女性会のメンバーは大忙しである。

女性会の役員が会員の自宅にお米と炊き込み御飯の具を配る。会員は、それぞれの家庭で炊き込み御飯を炊き、大会当日の午前8時30分に自治会館に持ち寄る。

そして、女性会とお手伝いのメンバーが共同で、かやく御飯のおにぎりを結ぶなかに会話が弾むのである。

炊き込み御飯のおにぎりを結ぶ

女性会のメンバーとお手伝いのメンバーで。会話が弾む。

豚汁は、おにぎり隊以外のメンバーが自治会館で調理する。この間、男性陣はグラウンドにラインを引き、テントをたて、万国旗を飾る。

午前10時に開会。清水鼻町の一大交流イベントがスタートするのである。

ラジオ体操の様子

大縄跳びの様子

そしてお昼。

テントを移動させて、参加者全員が入れる場所をつくり、全員でかやく御飯のおにぎりと豚汁をいただく。

ビールも飲みながら食べる人もいて、賑やかで和やかなランチタイムのひと時が流れる。

お昼ごはんの様子。参加者が一緒におにぎりと豚汁を食べる。

清水鼻町では、日枝神社広場で納涼カラオケ大会も開催していた。テントを立て、ビールケースで舞台を作り、賑やかな夏の夜を過ごしていた時期もある。

地蔵堂に祀られている「三体地蔵」(市文化財)。このうち「酒買地蔵」の伝説はテレビの「まんが日本昔話」で放映された。

今は健康スポーツ大会が、年1回の清水鼻町の住民同士の出会いの場、交流の場となっている。

それゆえに、みんなで同じものを一緒に食べる場と時間というのは尊いのである。

女性会のメンバーも以前は20名ほどであったが、今は10名足らずに。

しかし、この尊い場と時間を持ち続けようと「ランコントル(rencontre)」の場を大切にしようと、女性会以外の住民も手伝って、全員のおにぎりを結ぶ。

清水鼻町の財(たから)の営みである。

(聞き手:深尾 浄信・奥村 昭)

(報告:社会福祉法人六心会 地域支援担当 地域支え合い推進員 奥村 昭)