みんなが集う「もう一つの家」~小幡町みんなのカフェ

2020年(令和2年)10月21日(水)に、今年3月からコロナ禍で休止していた「小幡町みんなのカフェ」(以下、カフェ)が7か月ぶりに再開した。

この日参加したのは女性6名、男性1名の合計7名。

公会堂の広間に用意された席に着くと、カフェボランティアの枩藤あさ子さんが準備した「ウエルカムドリンク」をいただきながら世間話に花を咲かせる。

この日はゆず茶やホットコーヒーが振舞われた。しばし、心と身体を温める。

入れていただいたゆず茶

午後1時30分を少し回ったころ、カフェボランティアの大橋久子さんが「コロナ禍で中止していたカフェを久しぶりに再開します。やっぱり話すことは大切ですね。」と参加者に語りかけ、サロンがスタート。

大橋さんは、五個荘小幡町の民生委員・児童委員。そして、介護予防運動指導員・リズム体操指導員、高齢者生活体力づくりリーダーで介護福祉士である。他の自治会のサロンでも活躍している。

大橋久子さん

参加者はソーシャルディスタンスを確保し、間隔を空けた椅子に座って、「指の体操」から始まり、踵を上げ下げする「足の体操」へ。そのあとは椅子に座ったまま両足を交互に上げ下げして「歩く」運動。

指の体操の様子

さらに「歩く」運動をしながら、大橋さんが1から順場に数字を読み上げる。「3の倍数になったら手を叩いてください」の声に、参加者も足を動かしながら頭を使って3の倍数で手を叩く。「あ~間違った」と笑い声も聞こえる。

最後は、タオルを使った運動。タオルの両端をもって体にタオルをくぐらせる。そして、タオルの真ん中と両端2か所を結わえて、放り投げキャッチする。色とりどりのタオルが宙を舞う。うまくキャッチできた人、キャッチできなかった人。みんな一生懸命である。

色とりどりのタオルが宙を舞う

体操が終わり、大橋さんが話題提供。

「百歳時代と言われますが、『そんな長生きせんでええ』という人もいれば『百歳まで生きたら世の中変わる』という人もいます。」

「笑うことは大切です。笑うとNK細胞が活性化します。自分が笑うと周りも笑います。元気になります。」

そして締めは「幸せの三密」の話。

「くろみつ・あんみつ・はちみつ」の「甘くておいしい幸せの三『蜜』」のオチの後は、枩藤さんに交替。

一人ひとりに準備された茶器で抹茶を立てる。ほんのりと甘い「幸せ」の落雁と、抹茶をいただく。

抹茶を立てる枩藤あさ子さん

枩藤さんは、特別養護老人ホーム清水苑で施設ケアマネージャーとして働いているが、この日は休暇をとってサロンボランティア。

最後に「頭の体操」「似ている漢字探し」や「二字熟語タテヨコナナメ」などの問題に取り組む。一人で取り組む人、隣の人と「○○と違う?」など、話しながら取り組む人。最後の答え合わせでは「やっぱりそうや」とか「ああ~」といった声が飛び交う。

頭の体操~一生懸命問題に取り組む

これで、この日のカフェは閉会。

おみやげは、自治会役員の日比さんの庭でとれた胡桃。「掌でころがして指の運動にしてね」という大橋さんと枩藤さんの声に見送られながら、参加者は帰路についた。

 

カフェが開始されたのは平成31年3月3日の日曜日。

きっかけは、町内の85歳の独居高齢者宅の新聞受けに3日分の新聞が溜まっているという通報を受けた警察官が開錠して家に入ったところ、転倒して動けなくなっていて、緊急搬送されたという出来事であった。この出来事に

危機感を感じた枩藤さん、大橋さんら5人が自治会内の気になる人や心配な人について「見守り会議」を開催したことである。

そして、このメンバーが話し合って、世代を越えて自治会の皆さんが参加できるカフェを開催して、どんな人が暮らしていて、どんな見守りが必要なのかといったことを考えるきっかけにしようと「小幡町みんなのカフェ」を開催することにした。

3月3日は、午前8時から午後3時まで公会堂で開店。自治会からは公会堂の使用許可だけではなく、お菓子も準備してくださった。第1回目は53名が参加。子どもも2人来てくれた。

2019年4月10日(水)に開催したカフェの様子

2019年8月25日(日)に開催したサロン&カフェの様子

2019年8月25日(日)に開催したサロン&カフェの様子

これを皮切りに毎月開店。

「赤ちゃん子ども、パパ、ママ、シニアからご高齢の方も・・地域の皆さんのたまり場として、どなたでも参加いただけます。世代を越えて・・みんなで集いましょう。ほっとできる時間・・お茶でくつろぎながらゆっくりお話ししませんか」と呼びかけるチラシが毎月回覧板で回覧される。

令和2年(2020年)3月にコロナ禍により中止となるまで、13回を数えた。カフェとふれあいサロンを合同で開催するときもあり、平均約40名が来店した。

こんなエピソードがあった。

ある月のカフェ。高齢のご夫婦が参加した。

大橋さんの「自分が笑うと周りも笑います。元気になります」との言葉に、「そんなもん、オバアと二人で何を笑おうか」といいながら、久しぶりに二人で笑ったという。

ちょっとした体操やレクリエーションも普段家ではやらない。家でやらないこと、できないことを「みんな」でやるのが楽しい。失敗は笑いのもと。笑うと元気になる。一人では何か失敗しても笑わない、笑えない。

1回100円の参加費をいただいているが、全経費を賄うのは厳しい。そんななか、今年度から東近江市社会福祉協議会が「ふれあいサロン」の助成の対象としてくれ、予算面では一息つけた。

カフェに嬉しい展開があった。

公会堂は月・水・金曜日の週3日、午後1時から5時まで開いている。

カフェは月1回水曜日に開店しているが、毎月参加している子どもたちがカフェ以外の日にも公会堂に「下校」し、宿題をしたり、遊んだりするようになった。

遊んだ後は、自治会でストックしているジュースで一息つく子どもたちの姿が見られ、にぎやかな時間が流れる。

五個荘小幡町でも核家族が多く、祖父母と同居している子どもたちも少なくなった。

そんな中で、約30人の子どもたちが月1回「ただいま!」と言って公会堂で宿題をしたり公会堂に隣接する公園で走りまわったりする姿が、五個荘小幡町の光景となっていった。

五個荘小幡町公会堂

しかし、この姿もコロナ禍でなくなった。

枩藤さんが散歩していると、子どもたちから「あっ!カフェのおばちゃんや~ カフェやらへんのか?」と声をかけられるという。

取材に訪問した日も、下校した子どもたちが公会堂の横にあるブランコに乗りながら「公会堂開いているかな」と話していている姿が見られた。

 

五個荘小幡町の「みんな」が集う、もう一つの家。

子どもたちも交えて「小幡町”みんなの”カフェ」を1日でも早く再開できることが、ボランティアスタッフ、自治会役員の方々の願いだ。

 

(聞き手:小杉 勇 ・ 奥村 昭)

(報告:社会福祉法人六心会 地域支援担当 地域支え合い推進員 奥村 昭)