みんなで夕涼み~五個荘山本町貴船自治会“夕涼み会”

箕作山の山麓に高龗神を祭神とする貴船神社がある。

貴船神社の創立の年代は詳しく分かっていないが、棟札には天保14年 (1843年)11月17日に社殿が再建されたとあり、神鏡には文化9年(1812年)の銘があるという。

貴船神社

五個荘山本町貴船自治会は、貴船神社を下った箕作山の麓にある。

箕作山登山道入り口

自治会名に「貴船」を戴いた、1996年(平成8年)にできた116世帯・人口392人の五個荘地区で最も新しい自治会である。

新興住宅地であり、若い世帯が多いため高齢化率は約8%と五個荘地区でも群を抜いて低い。

山本貴船町ができた年から始まったイベントがある。

それが「夕涼み会」である。

「夕涼み会」は毎年7月第4週目の土曜日に自治会主催で開催される。

自治会長、副会長、会計、副会計、会計監査、評議員、各組長、福祉推進委員、健康推進員、スポーツ推進員、人権のまちづくり推進委員の合計25名の自治会役員全員で取り組む。

自治会館を本部に、自治会館の両隣の空き地を会場として催される山本貴船町の一大イベントである。

五個荘山本町貴船自治会館

自治会へ入る道路の一部を通行止めにして、歩行者天国ならぬ「山本町貴船天国」となる。

会場にはびっしりとビニールシートが敷かれ、あちこちで話に花が咲く。

焼きそばや焼き鳥、おでん、綿菓子、かき氷などの模擬店が並ぶ。マジックショーや和太鼓演奏などの余興も行われる。

模擬店の様子(五個荘地区まちづくり協議会『わがまち一番』より)

抽選会も行われ、全戸に配布される「夕涼み会」の案内チラシにはついている抽選チケットで1等が当たった方には5,000円の商品券が贈られる。

「夕涼み会」には、抽選のみの方も含め、ほぼすべての住民が参加する全世帯・全世代での夕涼みである。

「夕涼み会」の企画は4月から始まる。

役員会で7月までに3~4回検討が重ねられ、その年の企画が作り上げられていく。

自治会長は「夕涼み会」の最高責任者。

仕事が休みの土日には、食材や子どものお菓子の発注に走り回る。

昨年は、大津市の保育園での散歩時での交通事故を受けて、宅配業者が社会貢献活動として実施する交通安全教室を開催する計画をして、いろんな調整も行ってきた。

前自治会長の春日さんは「どちらが本業か分からなくなるくらいです」と笑って話す。

しかし、苦労して準備した「夕涼み会」が、昨年は令和元年台風6号の影響で中止。

悔しいながら中止は止むえないとしても、大きな問題が残った。

購入した食材をどうするかである。

模擬店はチケット方式で、すでに住民のみなさんには購入してもらっている。

キャンセルはできない。購入した食材を廃棄するにも、引き取るわけにもいかない。

すると、ある役員から「調理して、みなさんに渡そう」という提案がされ、役員のみんなが一致団結。

大量の食材を調理し、無事、自治会のみなさんに渡すことができたという。

「これは本当に助かりました。ありがたかったです。」と春日さんは話す。

 

子ども会による「子どもビンゴ」も毎年開催されている。

昨年の台風では夕涼み会は中止となったが、自治会館で「子どもビンゴ」を開催し、多くの子どもたちが参加した。

ビンゴの景品は、おもちゃ専門の某大型店で子ども会の役員が購入。

おもちゃが当たった子どもは大喜び。

そんな「夕涼み会」も昨年の台風に続き、今年はコロナ禍で中止に。

山本町貴船ができてから間もなく四半世紀が経つ。この地で生まれて成人し、社会人になっている人もいる。

五個荘山本貴船町(五個荘地区まちづくり協議会『わがまち一番』より)

「夕涼み会」は、生まれてからずっと、当たり前にある「楽しい」風景であり、それを企画・運営する大人たちにとっては、子どもたちの成長を感じるひと時でもある。

山本町貴船はこれからも宅地開発が進み、この地をふるさとにする新たな住民も増えていく。

「夕涼み会」は間違いなく山本貴船町の「ふるさと」の風景となっている。

 

(聞き手:川嶋 重剛・奥村 昭)

(報告:社会福祉法人六心会 地域支援担当 地域支え合い推進員 奥村 昭)